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久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その7】

コラム

「課題先進地」である被災地を訪問して日本の未来を学ぼう

※この記事は2018年3月15日に作成されました。

奇跡の一本松。2011年4月撮影、陸前高田市提供

東日本大震災から7年を迎えました。
3.11関連の報道を見て、東北のことを「思い出した」人も多かったのではないでしょうか。
一方で、いまさら支援物資を送るでもないし、どう関わったらよいかわからない、という声もあると思います。

震災から7年、被災地とどう関わったらよいのか
私は、ボランティアに行くでもない、単に「訪問する」ことをおすすめします。特に、防災などを学ぶために東北を活用してはいかがでしょうか。
私は現に2月下旬、学生15人を連れて岩手県内の被災地を回ってきました。 陸前高田市は、震災直後にボランティアに入ったのが縁で4年間、副市長を務めた場所です。
震災で人口の7%を失いましたが、数年間にわたって中心市街地のかさ上げ工事を行い、昨年4月にはショッピングモール「アバッセたかた」、7月には図書館が相次いでオープン。住民が待ち望んでいた商店街が復活しました。

被災地は少子化や高齢化の「先進地」である インフラの復興が進むにつれ、震災直後の支援する側とされる側という関係にも変化が求められています。
例えば、震災後に地域の若者らが中心になって設立した一般社団法人「マルゴト陸前高田」は、全国からの来訪者を相手に被災した道の駅や「奇跡の一本松」を案内し、津波発生時の様子を生々しく伝えます。
震災前から少子化、高齢化に悩む被災地が求めているのは、交流人口の拡大です。
被災地でのボランティア活動は減ったものの、本学を含む教育機関や富士通などの企業には、継続的に被災地を訪問しているところもあります。
訪問の主な目的は「学び」です。被災地は少子化や高齢化の「先進地」であり、災害はどこでも起こりえます。日本全体の未来の姿ともいえるでしょう。

教育目的や防災目的で東北被災地を訪問してはどうか?
そこでは「アイデアや人手がほしい」という声をよく聞きます。
これから社会に出る学生や若手社会人にとって、現地のニーズをくみ取って、街づくりに生かす体験ができる場は多くありません。
しかし、復興が進む被災地では、自分たちの活動が反映され、ダイナミックに変化する様子が見えやすいのです。
今回の訪問も、15人のうち7人は初めてでしたが、8人は再訪でした。大船渡市では、震災後に生まれた商業施設「キャッセン大船渡」から1周年記念イベント用のポスター製作を頼まれ、学生は取り組みました。

被災地が実施するプログラムに参加し、現実をリアルに見ることによって、それぞれ自分たちの防災に役立てたり、大きな学びが得られるのです。
被災地では、震災への関心が薄れ来訪者が少なくなる中、どんな理由であれ、来訪者を歓迎しています。
全国の教育関係者、企業研修担当者、自治体及び自主防災組織などの防災関係者には、今だからこそ、被災地訪問を計画してはどうか、と呼びかけたいと思います。