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久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その3】

コラム

仮設住宅の課題と今後を考える

※この記事は2018年3月6日に作成されました。

2011年4月、陸前高田市米崎小学校敷地における仮設住宅の建設風景。陸前高田市提供

最初に建設された陸前高田市立第一中学校の仮設住宅が、今月末で廃止されます。今年度末をもって原則的に仮設住宅の供与は終了し、今後は特定の方だけ入居延長が認められるのです。仮設住宅の課題と今後を考えます。

そもそも仮設住宅とは?
前回の記事で、仮設住宅が被災地にまだ残されていることを書きました。本稿では、その課題と今後を考えます。
そもそも仮設住宅とは、災害救助法に基づき供与される施設(正式には「応急仮設住宅」)です。プレハブの仮設住宅の他、既存の民間賃貸住宅を自治体が借り上げて仮設住宅とする「みなし仮設住宅」も含まれます。

住民の感覚からすれば、数か月間のプライバシーもなくストレスフルな「避難所」から家族水入らずの「仮設住宅」に移った瞬間(2011年4-8月頃)は「ようやく一歩前進」と喜べました。
避難所となっていた陸前高田市立第一中学校の体育館。同市提供 しかし、家賃無料とはいえ(光熱費は入居者負担)、仮設住宅は狭いです。
夫婦と子供2人の標準的な世帯が、4.5畳の和室×2+キッチンとユニットバスが付く「2K」と呼ばれる9坪(30m2)程度の部屋に住んでいます。

大学受験を控えた高校生や思春期のお子さんがいても、仮設住宅では「子ども部屋」など持てるはずもなく、そうしたご家庭のご苦労は察するに余りあります。
仮設住宅の内部。陸前高田市提供仮設住宅の立地上の問題点 さらに、仮設住宅は、小中高の学校敷地(校庭)に建てられていることが多いです。これは、仮設住宅の建設時に、すぐに使える(造成の手間が要らない)平地が他になかったからなのですが、結果として児童・生徒の体育・部活動に支障が生じています。

このような仮設住宅での生活が長期化するにつれて、被災者は「この生活がいつまで続くのだろう」「いつになったら仮設から出られるのだろう」という不安を持つようになりました。

ところが、阪神大震災と異なり津波被災地では住宅の現地再建ができないために、新たな移転地を高台やかさ上げ地に求めなくてはならず、そうした土地の取得手続きに多大な時間と労力がかかっているのが現状です。特に被災が大きい地域では広大な移転地を確保しなければならず、それだけ復興に時間がかかっています。

災害公営住宅の整備や防災集団移転などの住宅再建が進んできたことから、国や自治体も仮設住宅の解消に力を入れ始めました。
仮設住宅(みなし仮設住宅含む)の入居期限は2年ですが、これまでは1年ごとに延長されてきました。
ところが、2017年度末をもって原則的に供与が終了することとなり、再建先が決まっているものの工期の関係で期限内に退去できないなど、特定の要件に該当する方だけ入居延長が認められることになりました(特定延長)。

こうした決定を受け、自治体でも解消を急いでいます。例えば、東北で最初に建設された陸前高田市第一中学校の校庭にある仮設住宅も、今月末で廃止されることになりました。
先述の通り学校の校庭を早く返すことは必要ですし、経済力もあって住宅再建の目処もついている被災者が供与期間が延長される限り居住し続ける「フリーライド問題」もありますが、集約のために仮設住宅から(別の)仮設住宅に移らなければならない被災者も出てきます。
無論、仮設から仮設への引っ越しは、被災者が喜んでするものではありません。
仮設住宅の早期解消は必要ですが、それと同時に、本人に責任のない事情で住宅再建が遅い被災者が追い立てられることがないよう、きめ細かな対応が求められるでしょう。