久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その2】
コラム
東北の被災地に、仮設住宅はまだあるのですか?
※この記事は2018年3月1日に作成されました。
仮設住宅には、どのくらいの被災者がまだ残っているのでしょうか。阪神大震災と比べてどうなのでしょうか。東京オリンピックまでに、仮設住宅の解消は可能なのでしょうか。仮設住宅から、復興の状況を考えてみます。
『被災地に、仮設住宅はまだあるのですか?』私が各地で講演をするときに、このように質問されることがあります。
答えはもちろんYESです。本稿では仮設住宅に着目して復興の状況を考えてみます。 復興庁によれば、全国の避難者数は2017年12月12日現在で7万7千人。発災直後のピーク時には47万人だったので、当初の16.4%まで減少しました。
また、仮設住宅戸数は、2012年4月の123,723戸から2017年9月には22,173戸までと、当初の17.9%まで減少しました。
この数値を見ると、高台移転や災害公営住宅の建設などの住宅再建については概ね順調に推移したように見えますが、近年の大規模災害である1995年の阪神・淡路大震災では、5年後の2000年には仮設住宅がゼロになっていたことと比較すれば、復興の歩みは早いとは言えません。
2000年1月14日付神戸新聞によれば、同日をもって明石市内の最後の仮設住宅が解消されたという。阪神大震災と比較して遅い原因は?
復興の遅れについては、様々なことが言われています。例えば立命館大学の塩崎賢明教授は災害公営住宅建設の遅れの原因に用地取得の難航、建設作業員などの人材確保の困難、資材・人件費の高騰(これによる入札不調)、さらにはその背景として東京オリンピック開催決定による公共工事の増加を挙げています。
他にも復興の担い手となる自治体職員の不足(陸前高田市では正職員の25%にあたる68名を津波で失った)なども一因でしょう。阪神大震災と大きく異なる点としては、津波災害であったことです。現地再建が可能であった阪神大震災と比べ、東北では津波被災のために現地再建ができず、新たに高台などに移転しなければならなかったのです。前回の記事でも書きましたが、高台などの土地取得に多大な労力と時間を要するケースが多く見られました。この点、現行制度が簡素化されていれば、住宅再建は早く進んでいただろうと考えます。
仮設住宅の解消進むも東京オリンピックまでに間に合うか? 岩手県『応急仮設住宅(建設分)供与及び入居状況(平成29年12月31日現在)』によると、陸前高田市においては、当初の建設戸数2,168に対し2017年12月31日現在の入居戸数は530で、入居率は24.4%となっています。先の復興庁の数値より6.5%程度入居率が高いのは、同市の被災状況が大きいことによるものと考えられます。
現在もなお仮設住宅にお住まいの被災者の皆さんは、マイホームなどの再建を待っている方々です。仮設住宅は年度末である今月末で原則として供与期間が終了し、それ以降は特定の要件に該当する方だけ入居延長が認められることになりました(特定延長)。これにより、来月以降に仮設住宅の撤去と集約が一段と進むと考えられます。
とはいえ、陸前高田市を含む被災の大きい東北被災地においては、仮設住宅は東京オリンピックの頃(2020年前後)まで残ると予測されています。復興を表す指標には様々なものがありますが、仮設住宅はその中でも最も重要なものだと考えますので、特定延長の件も含め、改めて次回以降に「仮設住宅の課題と今後」を書きたいと思います。
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