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久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その4】

コラム

なぜ、7年経っても被災地への応援職員が必要なのか?

※この記事は2018年3月8日に作成されました。

陸前高田市における若手職員による打ち合わせ。地元職員と応援職員が入り混じって業務を行なっている。2012年11月筆者撮影

東日本大震災の被災地への全国からの応援職員が新年度に減る見込みだというニュースに対し、「自前で雇えよ」「7年間何してたの? もう自立すべきでは?」といったコメントがありました。解説してみます。

先週、J-WAVEのラジオ番組PICK ONEに出演し、被災地の実情についてお話させていただきました。この番組はニュースメディアであるNewsPicksのプロピッカーが専門分野を語ることになっています。
3月になったから復興関係を専門分野としている私が呼ばれたのだろうと思います。

その時話したテーマの元ニュースは「ボランティア100万→3万人 震災復興、人手先細り」(2018年1月28日付東京新聞)というものでしたが、ラジオ放送後にNewsPicks上で寄せられたピックコメントの中に、「震災から3年以内くらいなら、職員自身が亡くなったり被災したりして、物理的に人手が足りなかったでしょう。ただ、そこから数年経って、新たに復興のための自前の職員を雇うことはできないでしょうか?」というものがありました。

また、3月5日付で配信された朝日新聞の「東日本大震災の応援職員、新年度2割減 42市町村調査」に対し、Yahoo!ニュース上でも辛辣なコメントが並びました。
「自前で雇えよ」「いつまでも復興という名目で見せるための人的援助をする必要はない。」「応援職員に依存しない自治体にならないとね。」「7年間何してたの? もう自立すべきでは?」被災地ではすでに自前で採用している
私は上記コメントに同意するものではありませんが、そのような疑問を持つ人が多いのは理解できますし、ラジオでの自分の舌足らずな説明も悪かったかもしれないと反省し、解説してみたいと思います。

まず、これらのニュースでは全く触れられていないのですが、この7年間の間に応援職員に頼りつつも、自前での採用を進めています。私も陸前高田市在任中に採用に関わりましたが、「陸前高田市定員管理計画」(2015年1月)によれば、2011年4月1日に30人、翌年度以降も18人、20人、10人と2014年度までに計78名と、大量に採用しています。
当時は新卒採用に加え、即戦力を期待し経験者(40代くらいまで)も加えて採用していました。

計画では2015年度以降は各年度3人程度の採用予定としていますから、臨時的な採用は2014年度まででほぼ終了したということでしょう。同市によれば震災時点の職員数は295人で津波により68名が死亡しましたが、こうした採用の結果2016年4月1日時点では298名まで職員数は回復しています。
将来を考えれば、震災前の職員数以上の採用には抑制的。
震災前の職員数に戻すだけでなく、復興需要に応じてそれ以上の人数を雇うべきではないか? という意見もあるだろうとは思いますが、そう簡単ではありません。なぜなら、一度採用したら、彼(彼女)が20代新人だとすると30-40年は雇用しなければならないからです。

復興業務は一時的なものですから、採用しすぎると余剰職員を抱えることになります。
将来は人口減少が見込まれる中、上記の計画でも次の通り採用に関しては抑制的です。復興を推進するため増加する業務については、派遣職員、任期付職員、嘱託職員、期限付臨時職員など多様な任用形態を活用し、安易に職員数を増加させることのないよう定員管理を行います。
本稿では陸前高田市を例にとりましたが、他の被災市町村でも状況は同様だと考えられます。「明日は我が身」に備えて防災研修の意味合いで応援職員を出してはどうか まとめると、大きなニュースにはなっていないものの、被災地でも自前で職員を採用し、震災前の職員数程度には回復している。
しかし、一時的な復興需要を満たすためだけに採用することには抑制的であり、その分を自前の任期付・嘱託・期限付職員で採用するか、応援職員に頼っている。ということですね。

「7年間も経ったのだから復興は終わったはず」という考えは無理もないとは思いますが、今も復興が完了していないのは、避難指示区域となっていた福島県内自治体と、岩手県・宮城県では被害が非常に大きかった自治体です。
被災が相対的に軽度であった自治体が復興完了まで応援職員の手を借りることができて、被災が甚大だった自治体は最後まで応援職員の手を借りることができない、というのは不公平に感じます。
無論、派遣する自治体側の台所事情も非常に厳しいと思っています。しかし、一方的な支援とは考えず、「明日は我が身」に備えて、職員の防災研修の意味で派遣を検討されてはどうでしょうか。