久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その1】
コラム
東日本大震災から7年。
被災地の大船渡市・陸前高田市に新しい商業施設オープン。
※この記事は2018年3月1日に公開されました。
死者・行方不明者合わせて18,440人が発生した東日本大震災から、今月で丸7年を迎えます。
本稿では、ボランティアに入ったのが縁で私が震災後4年間副市長を務めた岩手県陸前高田市と、現在私が所属する立命館大学と協定を結んでいる大船渡市を例にとり、震災から7年の現地の様子をお伝えしたいと思います。
震災により人口の7%にあたる1,757人を失った陸前高田市では、数年間にわたり壊滅した中心市街地を10m程度かさ上げする工事を行なってきました。
昨年4月には盛土された土地にショッピングモール「アバッセたかた」などの新しい商業施設が、7月にはこれに隣接する形で新しい図書館が相次いでオープンしました。
これに伴い、住民は新たな場所で買い物ができるようになると同時に、仮設店舗から本設店舗への移転、JRの駅の中心地への移転などが順次進んでいます。つい先週も、学生を連れて両市を訪れ、本年4月に予定されるまちびらき1周年記念行事用のポスター製作を手伝いました。
仮設店舗に慣れてしまった住民が待ち望んでいた本設商店街の復活を見て、その過程に関わった私も感慨深く、とても嬉しく感じました。
現行制度が壁となり遅れた復興事業 振り返れば、ここまで復興が進み、新たな取り組みが始まるまでは簡単な道のりではありませんでした。
防災集団移転促進事業は自宅を失った者が高台等に移転する仕組みですが、移転先の地権者の了解が得られないと移転先を新たに探さなくてはならず、事業が難航したのです。
津波で住宅等が消滅したエリアのかさ上げ工事も、陸前高田市の該当区域の2,000人以上に及ぶ地権者一人ひとりの了解を得なければ始められませんでした。特に土地利用に関しては、災害時の定めがないために現行制度が壁となり復興が遅れました。
災害時においては、自治体が事業用地を取得したり借地権を設定できる特例など、財産権への一定の制約を検討すべきだろうと思います。
新しい中心市街地が生まれ、全ての災害公営住宅が完成しても、今もなお仮設住宅で暮らし、マイホームの完成を心待ちにしている方もいますので、復興事業の全てが終わったわけではありません。
陸前高田市で震災直後からずっと仮設住宅で暮らす住民は、当初の4分の1程度まで減りました。とはいえ、住宅再建が最も遅い住民は、東京オリンピックが開催される2020年まで仮設から出られないと予測されます。「目の黒いうちに新しい家に移りたい」と望む高齢者の願いは、かなうでしょうか?
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