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久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その15】

コラム

西日本豪雨被災地の土砂撤去問題

※この記事は2018年7月30日に作成されました。

2018年7月の西日本豪雨の被災地(写真:Duits/アフロ)

息もつかぬ間に災害が日本列島を襲っています。
記録的豪雨となった平成30年7月豪雨について、現地で問題となっている土砂撤去について本稿では取り上げます。

先日私も広島入りし、広島弁護士会の今田健太郎弁護士に話を聞きました。
被災者への無料法律相談で多く寄せられている問題は、「土砂混じりがれき撤去」についてだそうです。
これは自分の家財や車などが他人の敷地に流れ込んでしまったために撤去を求められているという、不可抗力とはいえいわば加害者になってしまう問題と、自宅敷地に他者の家財や車などが流れ込んでしまったが勝手に処分して良いものか、その費用はどうなるかという、被害者としての問題と両方あります。

これらの撤去は当事者間の費用負担により自主的になされたり、ボランティアの手を借りるなどして処理がなされてきていますが、紆余曲折を経て、環境省が「平成 30 年7月豪雨に係る災害等廃棄物処理事業において、既に所有者等によって全壊家屋等や宅地内土砂混じりがれきの撤去を行った場合の費用償還に関する手続きについて(周知)」(長い!)を7月20日付で出したので、(少なくとも費用面に関しては)解決が図られました。
この内容は、既に(業者等に委託するなどにより)自力で撤去済みの場合であっても、(1)領収書と(2)施工前後の写真など書類を揃えれば、事後的であっても費用が補助されるというものです。今後の撤去の場合はまずは請求書を提出。

その他、必要書類が多いので、上記の通知を参照するか、所在市町村の窓口に確認のこと。また、領収書があっても、必要以上の作業を行った場合など、全額補助されるとは限らないのでご注意ください。
また、広島市は既にこの環境省通知前に「民有地内の堆積土砂等の撤去について」を出しており、民有地内の土砂等の撤去は市が処理すると方針を定めていましたが、撤去の需要が多すぎて、「市に連絡してもなかなか処理してくれない」という声が多くありました。

この環境省通知により、業者の手を借りるなどにより自力で処理した場合の費用が償還されることになったから、より迅速な処理が期待できます。
課題は『市町村によって対応のバラつきが生じていること』広島市のように対応方針を定めている例もありますが、今田弁護士によれば、環境省の通知が自治体内部でも周知が徹底されていないためか、窓口となる各市町村では「災害救助法の範囲内で対応する」「検討中」などと同じ広島県内においても対応にバラつきがあるようです。

もとより、住んでいる自治体の違いによって、受けられる補助が異なるのは公平とは言えません。 政令市などと比較すれば、一般市の一部や町村だとどうしても、体制が弱く対応が後手後手になりがちです。東日本大震災の被災地においては、例えば岩手県は沿岸の各市町村の実情に応じて職員を派遣するなどして、復興業務のサポートを行いました。今回のケースでも、広域自治体である県の役割が大きいのではないかと考えます。

今回被災された方におかれましては、こうした制度の存在を頭に入れた上で、市町村の準備が整うまであきらめずに、かつ粘り強くお待ちいただくことをおすすめします。1日も早い災害復旧を願っています。