久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その14】
コラム
※この記事は2018年6月18日に作成されました。
大阪地震から1週間経過。この間見えてきた課題とは?
本日で、大阪で6月18日朝に発生した地震から1週間が経過しました。気象庁は「地震発生から1週間程度、最大震度6弱程度の地震に注意してください。」としていますから、まだ油断はできませんが、少なくとも熊本地震のときとと違って、直後にさらに大きい地震に見舞われることはありませんでした。
とはいえ、大阪府内で死者5名、2018年6月24日付日経新聞によれば住宅被害は6700棟を超え、決して軽微な被害とは言えません。
本稿では、この間に見えてきた課題と今後の動きを整理してみます。
(1)ブロック塀の問題
今回の地震により倒壊したブロック塀で大阪府高槻市の寿栄(じゅえい)小学校の女児が犠牲になりました。
これを受けて大阪府警が業務上過失致死容疑で捜査を開始し、また浜田剛史市長も「市に責任がある」と謝罪する事態に発展しました。
報道によれば、同校のブロック塀は外部の防災アドバイザーから危険だと指摘を受けていたにも関わらず、その後の教育委員会の検査では安全と判断したといいます。
市長、教育長をはじめ教育委員会、学校の関係者としても、そもそも違法建築であることは思い至らなかったのだと推測されますが、これを機に全国的に各自治体で点検すべきだと思います。
佐賀県武雄市や宮城県の気仙沼市では、この件を受けて、早速調査を始めました。静岡市は、10年以上前からブロック塀撤去に最大10万円、改修に同25万円を助成する制度を設けています。大阪市も補助制度を創設する方針です。
今後は、二度とあのような死者が出ないことを祈ります。
(2)罹災証明書の受付始まる
被害の大きかった茨木市や高槻市は、先週から罹災証明書の交付申請の受け付けを始めました。
大阪市も本日(25日)から受け付けを開始します。
罹災証明は職員の現地(住宅)調査を経たうえで発行されるため、面倒な手続きのようにも思われますが、いうまでもなく、罹災証明は義捐金の配分を受けたり各種の補助金を受けるベースになるものです。
住宅被害を受けられた方は、必ず申請されることをおすすめします。
他方で、2013年の災害対策基本法改正により導入された(はずの)被災者台帳システムについては、今回はあまり活用されていないようです。各部署間の情報を一元的に集約し、「支援漏れ」や「手続の重複」がなくなることを期待して導入されたものですが、やはり事前の(災害前の)準備をしっかり行っておかなければ機能しないのだと感じます。
(3)仮設住宅
今回は全壊や半壊戸数が限られているため、大量の仮設住宅は必要ありませんが、大阪府は22日に府営住宅を応急仮設住宅として活用できるよう受け入れ準備を進めることなどを決定しました。 プレハブ仮設住宅を建設するのは時間もコストもかかりますが、既存の住宅ストックを活用すればスムーズに入居まで進みます。
今回は都市部で発生した震災ですから、なおさら空き住戸の活用が容易です。その意味では、自らが保有する既存住宅ストックを仮設住宅として活用するという大阪府の判断は妥当なものと考えます。(みなし仮設の活用については、以前の記事で書きました)
以上、ブロック塀の問題と罹災証明、仮設住宅について簡単にまとめました。余震がおさまり、住環境が落ち着くことが第一です。大阪地震が早期に沈静化することを期待しています。
最後に、今回の大阪地震が南海トラフ地震の「序章」だとする見解もあります。南海トラフ地震も首都直下地震も、(あるいはそれ以外の地震についても)いつ起こってもおかしくないだけに、直接被害がなかった人も今回の大阪地震をきっかけに、それぞれの立場で防災を見直してみては、いかがでしょうか。
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