更新情報

久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その12】

コラム

単線型復興から複線型復興へ

※この記事は2018年4月12日に作成されました。

東日本大震災の避難所。避難所に来ていない被災者もいる。(写真:ロイター/アフロ)

先日、とある省庁のヒアリングを受けました。
在宅避難者の把握・支援、住まい確保全般に関して調査したいということでした。
本稿では、住まいを中心に被災者情報の把握、支援方法について考えてみたいと思います。

単線型復興から複線型復興へ
ヒアリングで私が指摘したのは、現在の被災者支援は、単線型すぎるということでした。
現在の支援は、
(1)避難所

(2)応急(建設型)仮設住宅

(3)恒久住宅
という三段階で順を追って進んでいきますが、このラインからこぼれると支援が届きにくいことが挙げられます。(これは、塩崎賢明先生などが主張されています(『復興<災害>』、2014岩波新書))。

例えば応急仮設住宅(建設型、プレハブが多い)は一般的に想像する被災者向け一時的住宅ですが、それ以外にも「みなし仮設」という、民間の住宅(空室となっているアパート等)や既存の公営住宅に入居して家賃支援を受けるものがあります。また、自宅が被災しても自宅に住み続ける在宅避難者もいます。

みなし仮設居住者や在宅避難者もれっきとした被災者ですが、民間の支援団体からの支援物資やサービスは届きにくく、また行政(自治体)の目も応急仮設住宅の方に向きがちです。空室、空き家の活用にもなる「みなし仮設」 現在日本では空き家が増加していることもあり、限られた予算の中、応急仮設住宅を建設するのはコストも時間もかかります。

空室、空き家の活用にもなるみなし仮設住宅を活用することが効率的です。 東日本大震災では、空室の既存ストックが活用できた仙台でみなし仮設が多く供給されましたが、もともと賃貸物件が多くない岩手県沿岸部ではあまり活用されませんでした。どこで災害が発生するかにもよりますが、空室の既存ストックが活用できる都市部で発生した場合、今後はみなし仮設の活用が増えていくものと考えられます。

一方で、被災者のあり方が「複線型」になればなるほど、居住形態も応急仮設住宅だけではなく多様になるので、被災者情報の一元的管理が必要となります。
これまでは罹災証明書が被害(住家)の程度を証明する役割を果たしてきましたが、各種の支援メニューを申請するためには(罹災証明書には援護の実施状況等の記載がないために)被災者が役所の各部署に出向いて同じような手続きを繰り返す必要がありました。
そこで、2013年6月の災害対策基本法改正により、被災者台帳の規定が設けられました。これにより各部署間の情報を一元的に集約し、「支援漏れ」や「手続の重複」がなくなることが期待されます。

災害発生時のスムーズな支援につなげるため、自治体においては、災害発生前から台帳の様式の整備を行っていくなどの準備行為が必要となるでしょう。