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久保田たかし(崇)の『復興・防災論』【その10】

コラム

自治体は空振り恐れず避難勧告を

※この記事は2018年4月6日に作成されました。

2011年の台風15号では名古屋市など100万人超に避難勧告が出された(写真:ロイター/アフロ)

災害が発生した際、前回記事でお伝えしたように地方自治体は災害対策本部を立ち上げて災害対応の司令塔を担うわけですが、具体的には避難勧告等を出すという重要な役割があります。

本稿では、避難勧告の出し方について解説します。

気象庁の防災気象情報を受け、自治体は避難勧告等を発令
まず、避難勧告を出すまでの流れとしては、津波警報や大雨警報などの「防災気象情報」が気象庁から出され、これらを元に、それぞれの市町村において危険が及ぶ範囲などを勘案の上、避難勧告等下記3種類の避難情報を発令します。(内閣府『避難勧告等に関するガイドライン(平成29年1月改定』より
(変更前) (変更後)
「避難準備情報」 → 「避難準備・高齢者等避難開始」
「避難勧告」 → 「避難勧告」
「避難指示」 → 「避難指示(緊急)」 

上記の通り、2017年1月に避難情報の名称が変更となっていますが、これは、2016年の台風第10号による水害において、岩手県岩泉町の高齢者施設において避難準備情報の意味するところが伝わっていなかったことなどから、よりわかりやすく避難のイメージが伝わるように変更されました。
内閣府は「空振り恐れず早めに勧告」を奨励 近時の災害においては、自治体の避難勧告が出されないことや発出タイミングの遅れにより被害が拡大したと批判された事例が幾つかありました。

これを踏まえ、内閣府は2014年には「避難勧告等は、空振りをおそれず、早めに出すこと」を強調しています。
避難に混乱が発生するかもしれない深夜に避難勧告を出すことや、指定避難所のキャパシティが足りない中で多数の住民に避難勧告を出すことについては、自治体側に抵抗もあるようです。

冒頭の画像の2011年の台風では100万人超に避難勧告が出されていますが、それだけの人員を収容する避難所はありません。
しかし、事は人命に関わることですから、避難所のキャパシティや困難さにかかわらず、危機が迫れば避難勧告を躊躇せずに出すべきでしょう。
そもそも、「避難行動」の意味も、指定避難所への避難だけでなく、緊急時には屋内退避なども含まれます。

以上のように、内閣府のガイドラインもあって、今後は各自治体において「空振り恐れず」避難勧告を出していくことになると予測されますが、結果としては逃げなくてもよかった事例が増えてきます(被害が発生するよりは、その方が望ましいわけですが)。
住民の側も、「また空振りか」と思わず、人命に関わる事として、「訓練だと思って」逃げる行動様式と習慣が求められるでしょう。